2017年8月23日水曜日

音楽とカーチェイスが融合した疾走するミュージカルベイビードライバー - Yahoo!ニュース 個人

『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のイギリスの鬼才エドガー・ライト監督のハリウッド本格進出作。ジャンルで言えば“カーアクション映画”ということになるのでしょうが、この『ベイビー・ドライバー』はそこに“音楽”の要素を付け加えたことによって、さらに強烈な印象を残してくれます。さながら“疾走するミュージカル”とでも言いたい魅力にあふれているのです。

 主人公のベイビー(『きっと、星のせいじゃない』のアンセル・エルゴート)は童顔で、一見普通の青年。しかし車の運転席に座り、iPodで音楽を聴き始めると、天才ドライバーに変身。その超絶ドライビングテクニックで強盗団の逃がし屋として活躍していました。しかしベイビーは、行きつけのダイナーで働くデボラ(『シンデレラ』のリリー・ジェームズ)と恋に落ちたことから、ヤバい世界から足を洗う決意をしますが、犯罪組織が簡単に彼を自由の身にしてくれるはずはなく、トラブルが次々と襲いかかります…。

 なんといっても映像と音楽のシンクロがお見事。俳優の動き、カメラワークと曲調がぴったりと合い、銃撃戦の音や車の疾走音、ワイパーやクラッシュの音までが曲のビートに合わせて演出されています。約2時間の映画ですが、流れる曲は30曲以上。選曲ももちろんライト監督で、R&Bやブルースから、パンク、プログレまで時代を超えて多彩。冒頭のジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトムズ」から、一気に引き込まれていきます。ミュージシャン名を列記するだけで、マーサ&バンデラス、サム&デイヴ、ダムド、ジョナサン・リッチマン&ザ・モダーン・ラヴァーズ、T・レックス、ブラー、フォーカス、ゴールデン・イヤリング、デイヴ・ブルーベックと通好みなラインナップで、「音楽とアクション、僕が情熱を燃やしている二つのものを一つにした映画」と語るように、こだわりぬいた選曲が楽しめるのです。個人的にはクイーンの「ブライトン・ロック」の使い方がツボでした。

 ひたすらカーチェイスをしているだけではなく、後半はかなりバイオレンス度を増した展開になります。このあたりは好みが分かれるところかもしれませんが、予測困難なサスペンスとしては一級品。

 若い二人を囲んで、犯罪組織のボス、ドクには『アメリカン・ビューティー』のケヴィン・スペイシー、疑り深く粗野で凶暴なギャングのバッツに『レイ』のジェイミー・フォックスと、オスカー俳優たちが顔を揃えています。音楽が重要な役割の映画だけに、ジョン・スペンサー、スカイ・フェレイラ、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)といったミュージシャンも顔を見せる(懐かしやポール・ウィリアムスの姿も!)のがお楽しみ。

(『ベイビー・ドライバー』は8月19日から公開)

(c)2017 TriStar Pictures, Inc. and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

アンセル・エルゴートの主演作『きっと、星のせいじゃない』のレビューはこちら

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